いま、なぜファンドは外食業界に注目するのか?―成長と変化のレシピ
「うどんチェーンが売上2倍」「KFCが1300億円で買収」――近年の外食業界には、投資ファンドによる大きな動きが相次いでいます。注目の背景には、成長性、再編の余地、そして人材・ノウハウによる再構築可能性という、3つのファクターが存在します。
ファンドの注目が集まる理由
外食業界は新型コロナからの回復基調にあり、共働きや単身世帯の増加といった社会背景から需要の底堅さが続いています。こうした中で、ファンドは次のような観点から外食業界を“成長分野”と位置づけています。
- 外食業は数値管理と標準化で収益性を高めやすい
- 経営者交代で飛躍が見込める企業が多い
- 地域性の強いブランドを全国展開できるポテンシャルがある
たとえば「資さんうどん」は、ユニゾン・キャピタルの支援のもと、九州から関西・関東へと広がり、売上は2倍に。こうした実績がファンドの参入を後押ししています。
外食業界で伸びている業態とは
現在、外食業界の中でも特に成長が著しいのは次の3つの業態です。
- ファストフード系(KFCなど):テイクアウトや一人客に強く、全国規模で拡大可能
- カフェ業態:「カフェ・ド・クリエ」や「ベローチェ」などが統合・再編中
- 専門業態(ラーメン・天丼・つけ麺):つじ田や金子半之助などブランド性の高い業態がファンドの投資対象に
また、KFCを買収したカーライルは、年100店舗規模での出店戦略を計画しており、外食業界の中でも“数で勝負”できる業態が重宝されています。
消費者に支持される外食の傾向
現代の外食消費者は、価格と品質だけでなく、次のような「体験」に価値を見出しています。
- 直感的に選べるUX:例:券売機の左上に高単価メニューを配置し売上向上
- 共感型経営:KFCではFCオーナーと共同でビジョンを策定
- 地域発の安心感:「資さん」のような地元ブランドが支持を得やすい
加えて、「一人で気軽に」「短時間で」「栄養バランスも良く」というニーズが増えており、セルフカフェや専門系ファストフードが人気を集めています。
ファンドによる再成長のレシピ
ファンドは資金提供だけではなく、“プロ経営者”の投入や、KPIを用いた経営改革を通じて、企業を再成長させる「レシピ」を提供しています。
たとえば:
- 珈琲館・ベローチェなどを統合した「C-United」では、マクドナルド出身のCEOを起用し、利益率を大幅に改善
- つじ田では、券売機分析に基づいたメニュー配置変更で客単価UP
- チムニーでは「100日プラン」で短期課題を解決し、再上場に成功
課題とリスクも見逃せない
一方で、すべての投資が成功するわけではありません。ファンドが出資していた外食チェーン「OUNH」は2023年に破産。再建には、現場・資本・経営の三者連携が不可欠です。
従業員、投資家、外部人材の三者がバラバラでは、いかに資金があっても持続可能な成長は望めません。
まとめ:ファンド×外食が生む未来の食文化
外食は「人」が中心のビジネス。だからこそ、ファンドは単に買って育てるのではなく、人材・現場・理念を共につくる覚悟が必要です。
消費者の食のスタイルが変わる中、ファンドの知見と資金力、外食企業のブランド力と現場力が掛け合わされれば、新しい食文化を作る可能性は大きく広がります。
「変わる勇気」と「守る覚悟」。この両輪をバランスよく持つことが、外食企業の未来を左右する鍵になるのではないでしょうか。

