本則課税と簡易課税(特例の利用)のどちらが有利

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消費税の計算では、「本則課税と簡易課税のどちらが有利なのか」を比較することがあります。

しかし、卸売業・小売業・製造業・サービス業など、 複数の種類の事業を行っている場合には、もう一つ重要なポイントがあります。

それが、 簡易課税の中でも、事業ごとの売上割合によって計算結果が変わることがある という点です。

今回は、3種類の事業を行っているケースを想定して、 実際に消費税をシミュレーションしてみました。

今回のシミュレーション条件

今回の課税売上高は35,600,000円です。

3種類の事業を行っているものとして、次のように売上を設定しました。

  • 第一種事業(卸売業):28,200,000円
  • 第三種事業(製造業等):5,000,000円
  • 第五種事業(サービス業等):2,400,000円

合計すると35,600,000円となります。

また、本則課税で使用する課税仕入れは30,100,000円として計算しました。

まず本則課税で計算すると499,800円

最初に、本則課税による消費税額を計算してみます。

今回のシミュレーションでは、

  • 課税売上:32,363,000円
  • 課税仕入れ:2,134,363円
  • 納付消費税:499,800円

という計算結果になりました。

したがって、今回の条件における 本則課税の納付消費税額は499,800円です。

次に簡易課税で計算してみます

簡易課税制度では、実際の課税仕入れを使うのではなく、 事業区分ごとに定められた「みなし仕入率」を使って仕入控除税額を計算します。

主なみなし仕入率は次のとおりです。

事業区分 主な事業 みなし仕入率
第一種事業 卸売業 90%
第二種事業 小売業等 80%
第三種事業 製造業等 70%
第四種事業 その他の事業 60%
第五種事業 サービス業等 50%
第六種事業 不動産業 40%

複数事業の場合は「加重平均」で計算するのが原則

今回のように複数の事業を行っている場合、 単純に一つのみなし仕入率を使用するわけではありません。

原則として、それぞれの事業区分の売上に対応するみなし仕入率を使い、 事業ごとの売上割合を反映した加重平均によって仕入控除税額を計算します。

今回のケースでは、

  • 第一種事業:28,200,000円(みなし仕入率90%)
  • 第三種事業:5,000,000円(みなし仕入率70%)
  • 第五種事業:2,400,000円(みなし仕入率50%)

となっています。

これらをそれぞれのみなし仕入率を使って計算した結果、 簡易課税の原則的な計算による納付税額は501,300円 となりました。

ここまでなら本則課税の方がわずかに有利

ここで、本則課税と簡易課税の原則計算を比較してみます。

計算方法 納付消費税額
本則課税 499,800円
簡易課税(原則・加重平均) 501,300円

その差は1,500円です。

この2つだけを比較すると、今回のケースでは 本則課税の方が1,500円少ないという結果になります。

ところが、ここで計算を終わらせてはいけません。

第一種事業の売上割合を計算すると約79.2%

今回の売上構成をもう一度確認してみます。

第一種事業(卸売業)の課税売上高は28,200,000円、 全体の課税売上高は35,600,000円です。

したがって、

28,200,000円 ÷ 35,600,000円 ≒ 79.2%

となります。

つまり、第一種事業だけで全体の75%以上を占めています。

75%以上なら「みなし仕入率の特例」が使える

2種類以上の事業を営んでいる場合でも、 1種類の事業の課税売上高が全体の75%以上を占めているときには、 その事業のみなし仕入率を全体の課税売上げに適用できる特例があります。

今回の場合、75%以上を占めているのは第一種事業です。

第一種事業のみなし仕入率は90%です。

そこで、この90%のみなし仕入率を使った特例計算を行ってみます。

特例を使うと323,500円に

シミュレーションの結果、第一種事業が75%以上を占める場合の特例を利用すると、

納付消費税額は323,500円

となりました。

ここで、簡易課税の原則的な加重平均による計算と比較してみます。

簡易課税の計算方法 納付消費税額
原則計算(加重平均) 501,300円
第一種事業75%以上の特例 323,500円
差額 177,800円

なんと、今回のケースでは、 同じ簡易課税でありながら177,800円もの差が生じました。

3つの計算結果を並べると違いがよく分かる

今回の結果をまとめると次のようになります。

計算方法 納付消費税額
本則課税 499,800円
簡易課税・原則計算(加重平均) 501,300円
簡易課税・75%特例 323,500円

本則課税と簡易課税の原則計算だけを比較すると、 499,800円と501,300円ですから、それほど大きな差はありません。

しかし、売上構成を確認して75%特例を適用すると、 簡易課税による納付税額は323,500円となりました。

複数の事業を行っている場合には、 「本則か簡易か」だけではなく、「簡易課税の中でどの計算方法が使えるのか」まで確認することが重要 だということが分かります。

もし卸売業ではなく小売業が多かったら?

今回は、みなし仕入率90%の第一種事業(卸売業)が全体の約79.2%を占めていました。

では、仮に小売業の割合が多かったらどうでしょうか。

第二種事業である小売業等のみなし仕入率は80%です。 また、第五種事業であるサービス業等は50%です。

そのため、どの事業が売上の中心になっているかによって、 特例を適用した場合の結果も変わってきます。

「昨年はこの方法が有利だったから今年も同じ」 とは限りません。

事業ごとの売上構成が変化している場合には、改めて計算してみることが大切です。

3種類以上の事業なら「2事業で75%以上」の特例も

さらに、3種類以上の事業を行っている場合には、 特定の2種類の事業の課税売上高の合計が全体の75%以上 となる場合に利用できる特例もあります。

今回のシミュレーションでも、原則計算だけでなく、 複数の組み合わせによる特例計算を行い、それぞれの税額を比較しています。

複数事業の場合は、このようにいくつかの計算方法を比較することで、 より有利な方法を確認できる場合があります。

複数事業だからこそ事前のシミュレーションを

今回の例で特に注目したいのは、 本則課税と簡易課税の比較だけではありません。

簡易課税を選択している場合でも、事業ごとの売上割合によって納付税額が大きく変わる可能性がある という点です。

年度の途中でも、

  • 現在の課税売上高はいくらなのか
  • どの事業の売上が多いのか
  • 1事業で75%以上になっていないか
  • 2事業の合計で75%以上になっていないか
  • 原則計算と特例計算でどの程度違うのか
  • 本則課税で計算した場合はいくらになるのか

といった点を確認しておくと、納税額の見通しを立てやすくなります。

消費税シミュレーションで比較してみませんか?

消費税は、実際に数字を入れて計算してみると、 思っていた以上に結果が変わることがあります。

特に複数の事業を営んでいる場合には、 売上総額だけでなく「どの事業で、いくら売り上げているのか」 が重要です。

今回のケースでは、

  • 本則課税:499,800円
  • 簡易課税(加重平均):501,300円
  • 簡易課税(75%特例):323,500円

という結果になりました。

「自分の事業の場合はどうなるのだろう?」

「今年は卸売が増えたけれど、消費税にどんな影響があるのだろう?」

そんなときには、 消費税シミュレーションを使って、実際の数字で比較してみてはいかがでしょうか。


※本記事の金額は、シミュレーション条件に基づく計算例です。 実際の消費税額や適用できる計算方法は、取引内容、課税区分、軽減税率、届出状況、売上対価の返還等その他の条件によって異なります。 実際の申告や制度の選択にあたっては、個々の状況に応じてご確認ください。


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